かな書の顕微鏡写真

コラム

墨の濃いところと薄いところは、どうなっている?

墨色の妙

高野切1種

高野切 第1巻 巻頭 五島美術館蔵(写真引用:Wikipedia

かな書の特徴のひとつに、墨の濃淡による墨色の変化の美しさがあります。
墨を付けたときの濃いところと、文字を書き進んでいくにつれて淡くなっていくところが生じることで、作品に奥行き(立体感)がでます。

墨色の変化が最高に美しい古筆「高野切」を冒頭に紹介しました。
この写真でもその素晴らしさが伝わりますが、実物を五島美術館で拝見すると、霧にけむる林の中を覗いているような景色です。

では、濃いところと薄いところとでは、墨がどのように載っているのでしょうか?

かな書の光学顕微鏡写真

かな顕微鏡写真

高野切の後に自分の筆跡を持ち出すのはすごく気が引けますが、手元に高野切はないので仕方ありません。

鳥の子の紙に書いたものです。紙の繊維が長いことがわかります。

左側が墨が載ったところ、右側がかすれているところの拡大写真です。
墨が載っているところは、墨が繊維の奥にまでしみ込んでいて、線の輪郭が明確です。
一方、かすれているところは、繊維の表面に墨が部分的に付着しているようなかんじです。

書いた人の習熟度や個性が、墨と紙の相互作用に影響し、ひいては作品全体を決めると考えると、身が引き締まります。

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