裏打ちの可能性
作品をきれいに修復したい
自分でやる裏打ちについて紹介したコラムの続編です。
裏打ち作業に少し慣れてきたので、本料紙に書いた作品の裏打ちにも挑戦してみようと思いました。
本料紙はかな用の手漉き手加工の料紙で、複数の職人さんの手を経て生み出される貴重な紙です。そのため書き損じの紙でも空いたスペースを小作品に利用して最大限使いつくすようにしています。このときできるだけ広い面積をとりたいがために、元の墨が端に少し付いた状態でも紙を切り出すことがあります。
こうして作った作品を墨汚れのない状態にするために、裏打ちによる修復を試みました。
今回のチャレンジ
- 裏打ちによる作品修復
- 本料紙の裏打ち
墨汚れをなかったことに
人工大理石板(キッチン)を作業台に、作品のサイズは約8×8 cmで試しました。
手順1.修復用の紙を作る
作品に付いた汚れと、修復用の紙(修復用断片)を同時に切り取ります。
- 作品の表を上にして、カッターマットの上に置く
- 作品の汚れ部分の下に、作品と同じ紙(模様や色が似ている個所)を重ね置く
- カッターで汚れ個所を切り取る
紙を重ねて切っているので、汚れを取り除いた個所と同じ形の修復用断片が得られました。
手順2.でんぷんのりを使った昔ながら?の裏打ち
今回のような作品の修復はでんぷんのりを使った裏打ちでしか行えません。アイロン裏打ちだと難しいです。
前回の手順に 8. の操作を追加しました。
- 作品を裏返しにして霧吹きでまんべんなく濡らす
- 作品を破かないように伸ばしながらシワをとる(幅広の刷毛で)
- くるくると巻いて棒状にしたタオルを転がして、ある程度の水気とシワをとる
- 裏打ち紙(厚めの書道用紙にしました)に水で溶いたのりを刷毛で塗る
- のり付き面を下にした裏打ち紙を作品の上に置いて空気を抜く(幅広の刷毛で)
- 裏打ち紙の縁にのりを塗る
- 作品が付いた裏打ち紙をはがして、ひっくり返して(作品が見えるように)作業台に貼る
- 切り取って欠落した個所を修復用断片ですきまなく穴埋めする(←ここがポイント)
- 乾いたら作品を作業台からはがす
- はみ出た裏打ち紙をカットする
裏打ちによる修復は使える?
修復箇所がわかりづらい程度に修復できたと思うのですが、いかがでしょう。柄がある紙の方がより目立たなく修復できそうです。
また、右側の黄色い紙の方は本料紙なのですが、こちらもきれいに裏打ちできました。
まとめ
欠落個所とよく似た修復用断片を作り、それをすきまなく埋めることで、裏打ち後には何事もなかった(?)かのような仕上がりを目指せそうです。
原材料費の高騰や材料の供給不足、職人さんが少なくなる中、紙はますます貴重になっていきます。大切な紙をできるだけ有効活用できるような方法を模索していきます。