#217 年の内は訪ふ人さらにあらじかし雪も山路も深きすみかを
作品サイズ: | 半紙サイズ 約33×24 cm |
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仕立て: | 額装 |
どんな歌?
しいか: | としのうちは とふひとさらに あらじかし ゆきもやまぢも ふかきすみかを |
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詩歌: | 年の内は訪ふ人さらにあらじかし雪も山路も深きすみかを |
詠者: | 西行 |
歌集: | 山家集 |
制作: | 12世紀 |
出典: |
“山居雪” の詞書に続く歌です。
春になるまではこの庵を訪れる人はさらにいないであろう、雪が深く山路も奥深いこの住処を
といったところでしょうか。山里における隠遁生活の寂しさを詠んだ歌です。
よしなしごと
この歌は、雪深い山里に身を置く西行が、人の訪れの途絶えた静寂の中で詠んだものです。孤独を自ら選んだにもかかわらず、ひそかに人恋しさを感じる心情がにじみ出ています。
この作品の料紙には、南天の枝が描かれたものを選びました。南天は「難を転ずる」という言葉遊びから縁起の良い植物とされますが、赤い実を付ける姿は、厳しい冬の中にも希望や温もりを感じさせます。西行の和歌が持つ孤独の中にも秘められた人間らしい温かみに通じる気がします。
筆致には抑揚を持たせ、雪の静寂や人を想う心の揺れを表現しました。また、全体として心安らぐ安定感を目指しました。
冬の冷たさとそこに潜む温もりを感じ取っていただけたなら幸いです。