#229 朝日いま上らむとしてくれなゐに東なかばを染めぼかしたり

作品サイズ: | 半懐紙サイズ 約37×25 cm |
---|---|
仕立て: | 額装 |
どんな歌?
しいか: | あさひいま のぼらんとして くれなゐに ひがしなかばを そめぼかしたり |
---|---|
詩歌: | 朝日いま上らむとしてくれなゐに東なかばを染めぼかしたり |
詠者: | 清水比庵 |
歌集: | 比庵晴れ |
制作: | 1973年以前 (同集成立以前) |
出典: | 比庵晴れ 求竜堂 |
朝日が今のぼろうとして、東の空を紅に染めぼかしている
といったところでしょうか。
よしなしごと
朝日が地平線に昇ろうとする一瞬の光景を、静謐と高揚の間にあるような感覚で表現したいと思ったのですが、どう見えるでしょうか…。
実は、今回の作品は卒意の書、一発書きです。
書の制作をしていると、面白いことに気づかされる瞬間があります。
それは、「何度練り直してもしっくりこない作品」がある一方で、今回のように「一回ですぽっとはまる作品」もあるということです。
構図をどうするか、書き出しの一文字をどう置くか、紙の余白をどう活かすか……。作品づくりには、いくつもの判断が積み重なっています。頭の中で何度もシミュレーションし、試作を重ねても、「これだ」と思える形にたどりつけないことも少なくありません。迷って、離れて、また戻って……そんな作品に何日もかけることもあります。
しかし、今回のように、最初に筆をとったその瞬間から「これでいい」とすとんと腑に落ちる作品もあります。感覚が先に立ち、それに手がすっとついてきたようなかんじです。
書とは、つくづく不思議なものです。