
行きて見しもの
-見上げれば虹、足元にも虹
人生の大きな仕事をひとつ終え、ついに長年の夢だった敦煌を含めた中国シルクロードへの旅に行ってきました。一生に一度は訪れたいと願い続けてきた場所です。
この旅の記録を「予習編」と「復習編」の2本立てで綴りました。「予習編」もあわせてご覧ください。
この「復習編」では7日間にわたる旅の記録を時系列でご紹介します。また、今回の旅で役に立った中国語やアイテムについてもご紹介したいと思います。
3日目:張掖
空路、張掖へ。張掖はシルクロードの要衝、産物も豊富なため「金の張掖」といわれています。
張掖での出迎え
着陸直前、本来であれば全開にするはずの窓のシールドが、今回は全て閉じるように指示。機内からタラップで降りたのだが、滑走路や機体の撮影も禁止されていて、どこかものものしい雰囲気が漂う。
空港を出た途端、対向車線には軍事パレードさながらの軍用車両の列。なるほど、そういうことかと納得する。
そんなお出迎えがありつつも、張掖の空気は日差しこそ強いものの爽やかで、着いた途端、一気にこの地が好きになった。ニレの葉の黄色がきれい。ポプラの葉がキラキラと太陽に輝いていた。
七彩丹霞(しちさいたんか)… 七色に輝く美しい丘陵にミラクルが!
七彩丹霞は晴れ。長袖シャツ1枚ではやや肌寒く、上着をバスに置いてきたのを少し悔やんだが、耐えられないほどではなく一安心。
鉄の酸化状態(2価・3価)によって色が異なるという、美しい縞模様の岩肌に見とれる。どこまでも広がる美しい模様の景色を眺めながら展望台に向かって散策。
ところが、途中でにわかに空が曇り、雷雨に。日傘でしのぎながら、たくさんの観光客でひしめく東屋へ避難。
数分後、小ぶりになった岩肌から濃い虹が立ち上がっているのが見えた。指さすと多くの方々も気づき、おおきな歓声が上がった。
27年ガイドをしているCさんも「こんなのは初めて」と驚くほどの絶景。虹岩の上に、見事な二重の虹、これはミラクルでしかない! 自然がくれた最高のご褒美だった。

地元の少数民族の方々による歓迎の儀式
ホテルに戻ると、チベット系少数民族・ユーグ族(裕固族)の方々による歓迎の儀式が待っていた。吉祥如意を願って、白くて長いマフラーのような薄布=哈達(ハダ)を首にかけてくれた。そして、度数が高い香りのよいお酒を、透明な美しい切子ガラスのショットグラスでふるまってくれた。
人懐っこい笑顔の男性と二言三言ことばを交わしたのも、心に残るひとときだった。

4日目:張掖 → 敦煌
氷溝丹霞(ひょうこうたんか) … 東洋のグランドキャニオン
ガイドブック『地球の歩き方』にもまだ掲載されていない、知る人ぞ知る最新の観光地です。場所は、七彩丹霞のさらに西。ふもとには、少数民族・ユーグ族の村が広がっています。
赤褐色の大地に、風や雨によって長い年月をかけて削られた奇岩が連なり、その荒々しくも神秘的な景観は、まさに“東洋のカッパドキア”と呼んでも過言ではない。中には、三国志の英雄・劉備、関羽、張飛の姿に見立てた「桃園の兄弟」と名付けられた岩もあり、想像力をかき立てられます。
視界いっぱいに広がる大自然のスケールに圧倒されました。


高速鉄道 … 新幹線似のきれいな車両
張掖西駅周辺
敦煌へは、高速鉄道の張掖西駅から出発。出発まで少し時間があったため、駅の周辺を散策してみた。街は近代的に整備され、高層ビルの建設ラッシュが続いている。駅を背に右手には、七彩丹霞や氷溝丹霞へのツアーを扱う旅行会社がずらりと並び、左手にはコンビニ風の小さな店が2軒ほど、その奥には串焼きなどを提供する地元の食堂が軒を連ねていた。

高速鉄道事情
高速鉄道のセキュリティチェックは、空港よりも厳しかった。レトルトパウチを持参していたため、それを開封するためのはさみをトランクに入れていたのだが、空港では一度も問題にならなかったそのはさみが、ここではとがめられた。刃渡りが6cm以内であれば持ち込み可能とのことで、ギリギリでセーフ。保育園の頃から使っている思い入れのあるはさみだったので、没収されるのではと冷や汗をかいた。
高速鉄道では、大きなトランクの場合、車両間の専用スペースに置くことができるが、基本的には自分で網棚に載せるのがルールらしい。事情に詳しいOさんは、高速鉄道に備えて軽めのトランクを選んできたのだという。
車窓からの眺め
高速鉄道はシルクロードの河西回廊に沿って西へと進む。「河西回廊」の“河”とは黄河のこと。黄河が大きく北に蛇行する蘭州より西側の地域を、河西と呼ぶのだという。
この路線に乗ること自体、実は旅の目的のひとつだった。NHKの番組『関口知宏の中国鉄道大紀行 最長片道ルート36,000Kmをゆく』で見て以来、シルクロードをたどる鉄道にはずっと乗ってみたかったから。普段なら乗り物に乗るとすぐ眠ってしまうのに、今回は特別。窓際の席に座らせてもらい、4時間半、車窓からの風景をじっくりと眺め続けた。
長野で見るような山なみ・祁連山脈(きれんさんみゃく)を左手に見ながら農村地帯、そしてゴビの大地をひたすら進む。




途中の農村地帯では、北側が土の壁になっていて半分ビニールのビニールハウスを何度も見かけた。関口さんの番組で見た風よけがあるビニールハウスだ。
ゴビでは風力発電用の風車がずらっと連立する場所があった。「算数が得意」と仰るWさんは見える範囲の風車から全体の数を数千機あるのではと試算。帰国して調べてみると「酒泉1000万kW級風力発電拠点が正式に完成」という2021年6月のニュース記事を発見。1機が数千kwの発電とされるので1000万kw発電するには数千機の風車が必要。Wさんの試算は妥当な気がする。
そうこうするうちに、列車は敦煌駅に到着。駅舎に掲げられた「敦煌」の文字がこの地にとてもふさわしく、思わずぞくっとした。

