歴史フリークな書作家がゆく中国 西安~敦煌 -予習編-

コラム

人生の大きな節目をひとつ越え、ついに長年の夢だった敦煌への旅に出ることになりました。一生に一度は訪れたいと願い続けてきた場所です。

実のところ、「葡萄の美酒」の漢詩についての記事でも少し触れましたが、私は昔からとりわけ西域への憧れが強くありました。中学生の頃には、「いつかタクラマカン砂漠で果てたい」などと言っていたほどです。

今回、その夢を叶えるべく中国へ旅立ちます。ブログでは「予習編」と「復習編」の2本立てで、この旅の記録を綴っていきたいと思います。※記事は順次書き足していくため工事中箇所があります。

予習1.『地球の歩き方』を手に入れる

やはり、旅のガイドブックは紙で手元に置いておきたいもの。今回の旅に備えて『地球の歩き方・西安 敦煌 ウルムチ シルクロードと中国西北部』を探すことにしました。

しかし、これが予想以上に大変でした。このガイドは2019年に出版されたものの、現在はすでに絶版。ネットで探しても中古品ばかりが並び、状態や価格もまちまち。やむなくリアル書店をいくつも回りました。

そしてようやく、なんと敬愛する書家先生の個展で訪れた暑い町で、この一冊に出会うことができたのです。偶然のような、でもどこか導かれたような気がして、手に取ったときは思わずガッツポーズでした。

予習2.中国語のフレーズをマスターする

翻訳ソフトが優秀になったとはいえ、最低限の現地の言葉は身についていきたいものです。参考にしたのはNHKのゴガクルです。

日本語簡体字ピンイン
●挨拶
ありがとう!谢谢!Xièxie!
こんにちは你好!Nǐ hǎo!
すみません。不好意思。Bù hǎoyìsi.
ごめんなさい。对不起。Duìbuqǐ.
いいですよ。没关系。Méi guānxi.
どういたしまして不客气。Bú kèqi.
私は加藤です。我是加藤。Wǒ shì jiāténg.
●相づち
そうです。そのとおり。/いいえ違います。对。/不对duì/Bù duì 
有ります。/有りません。有。/没有。Yǒu/Méi yǒu
わかりました。明白了。Míng bái le
そうですね!可不是吗!Kẽ bú shì ma!
すごい!真了不起!Zhēn liǎo bu qi !
まあまあです。还可以。Búyòng xiè .
見ているだけです。我随便看看。Wõ suíbiàn kànkan.
●質問
すみません、お手洗いはどこですか。请问,洗手间在哪儿?Qǐngwèn,xǐshǒujiān zài nǎr?
これは何ですか?这是什么?Zhè shì shénme?
どうしよう。怎么办?Zěnme bàn?
どう行きますか。怎么走?Zěnme zǒu?
どう書きますか。怎么写?Zěnme xiě?
どうしましたか?怎么了?Zěnme le?
●依頼
お勘定をお願いします。买单。Mǎidān.
これひとつください。要一个这个。Yào yí ge zhèige.
ゆっくり言っていただけますか。请慢点儿说,好吗?Qǐng màn diănr shuō, hão ma ?
ちょっとお待ちください。请等一下。Qĩng děng yíxià.
すみません、あと10分待ってください。不好意思,再等十分钟。Bù hǎoyìsi, zài děng shí fēnzhōng.
ちょっと考えさせてください。让我好好儿想想。Ràng wǒ hǎohāor xiǎngxiang.

予習3.映画『敦煌』をみかえす

映画『敦煌(とんこう)』は、1988年に公開された日本と中国の合作映画で、監督・佐藤純彌さん、主演・佐藤浩市さんによる歴史大作です。原作は井上靖氏の小説『敦煌』です。

物語の舞台は11世紀、唐の時代が終わり五代十国時代を経た後の中国・西域。シルクロードの要衝である敦煌を中心に、学問を志す若者・趙行徳が、戦乱に翻弄される姿が描かれています。心打たれるのは文化への人々の深い思い。

たとえば「西夏文字」。
映画の中では、異民族・西夏が、漢字を元にして作った独自の文字を誇らしげに説明するシーンがあります。漢字のようでいて、全然違う。そして何より、「自分たちの言葉を、自分たちの手で記録したい」という気持ちがにじみ出ています。現在では使われなくなってしまった西夏文字ですが、それに対する当時の人々の思いが胸を打ちます。

後半には、趙行徳が仏教の経典や壁画を洞窟の奥深くに隠すシーンが出てきます。これ、実は史実に基づいています。20世紀になって、敦煌の莫高窟(ばっこうくつ)で大量の文書「敦煌文献」が発見されました。この映画では、それらがなぜ隠され、どう守られたのかという背景を、創作を交えて丁寧に描いています。

文化や信仰を守るために命を懸けた当時の人々のたくましさに、ただただ圧倒されました。

私たちが今、敦煌文献を目の当たりにできるのも、あの時代に「文化を残そう」とした人たちがいたからこそ。戦乱の中でも記録を守り、未来へ託した人々の存在があったからです。

壮大な砂漠の映像美もさることながら、静かに語られる「知の物語」が心に残るこの映画。数十年ぶりに鑑賞すると、また新たな発見と感動がありました。文化はただ伝えられるものではなく、自分たちの手で創り、そして守っていくものだということを思い知らされると、未来への通過点である現在の自分たちの重い責任を感じます。

予習4.『関口知宏の中国鉄道大紀行 最長片道ルート36,000Kmをゆく』をみかえす

2007年にNHKで放送された旅番組です。関口さんの飾らない人柄と豊かな感性、現地の方々とのコミュニケーションや多様な風景が面白く録画して繰り返しみていました。

今回、示唆に富んだ関口さんのイラストがふんだんに盛り込まれた同書籍も含めて、改めてみかえすことにしました。

~準備中です~

予習5.褚遂良 雁塔聖教序を臨書する

褚遂良(ちょすいりょう)は、初唐時代の政治家であり書家です。

彼の代名詞ともいうべき『雁塔聖教序』という石碑がある大雁塔も訪問予定です。

~準備中です~

西域の風に備えて ― 砂漠旅の準備あれこれ

旅の準備1.食事への備え

実は私、小麦アレルギー気味でして……。今回はツアー旅行のため、現地での主食が麺類になることもあるようです。もちろん代替メニューの用意はあるとのことですが、念のため自分で対応できるよう、食事の準備をしていくことにしました。

そんな私の体を気遣って、気の利く友人がスープセットを送ってくれました。これが本当にありがたい! おかげで野菜不足の心配もだいぶ軽減されそうです。

他にも、自分で用意した携帯食は以下の通り:

  • 玉子がゆ … 旅先でも手軽にタンパク質補給
  • ソイジョイ … 小麦不使用の栄養補助食品
  • フリーズドライのお味噌汁 … 日本の味でホッとひと息

これで、安心して旅を楽しめそうです。

旅の準備2.帽子にあごひもを付ける

日差しの強い砂漠地帯では、帽子は必需品。でも、風が強くて飛ばされてしまう恐れがあるので、あごひも付きの仕様にカスタマイズしました。

まず、帽子にクリップを留めるためのテープを縫い付けます。テープの端は、ほつれ防止のためにあらかじめライターで軽く焼いて処理。あごひもが耳の手前にくるよう、装着位置もきちんと確認してから縫い付けました。

使用したあごひもは、ダイソーで手に入れたUV感知アジャスター付きのもの。これが意外に優秀で、日差しの強さも分かるスグレモノです。

これで自転車に乗っても安心。風の中でも帽子が飛ばされる心配はありません。

旅の準備3.砂漠の風と雨に備える

砂漠と聞くとカンカン照りのイメージがありますが、実際には思いのほか気まぐれな気候。ときには激しい砂嵐が吹き荒れ、突然の雨に見舞われることもあるそうです。そんな自然の洗礼に備えて、長めのレインコートを新調しました。

選んだのは、丈がしっかりと膝下まであるタイプ。風よけにもなる上、ドローストリング付きのフードがしっかり頭を覆ってくれるので、多少の雨なら傘は不要。両手が空くのも旅先ではありがたいポイントです。

さらに、このレインコートは防寒着としても活躍してくれそう。西域では朝晩の気温差が15度以上になる日もあるとか。昼間は半袖で過ごせても、夜はコートがないと肌寒い、なんてことも。軽くてたためるこの一着は、まさに旅の強い味方です。

旅の準備4.災難に備える 〜グローバルWi-Fiと海外保険〜

どれだけ綿密に準備をしても、旅に「まさか」はつきもの。スマホがつながらない、体調を崩す、荷物が届かない──そんなトラブルに直面したとき、最後に頼れるのは、やはり基本の備えです。

まず、通信手段の確保。今回の旅では、現地での地図検索や翻訳アプリの使用、緊急時の連絡に備え、海外用ポケットWi-Fiを契約しました。SIMの差し替えも検討しましたが、ツアー旅行ということもあり、設定不要で複数端末が使えるポケットWi-Fiの方が便利と判断しました。

また、中国国内のインターネット環境には「金盾(グレート・ファイアウォール)」と呼ばれる情報規制システムがあり、GoogleやLINEなど、日本で慣れ親しんだサービスが制限されています。しかし、このレンタルWi-Fiを使えば、日本と同じインターネット環境でスマホを操作できるため、非常に心強い存在です。

そしてもうひとつ大事なのが、海外旅行保険です。万が一、病気やケガをしたときに病院を探す手間が省ける「キャッシュレス診療対応」の保険を選びました。加えて、ロストバゲージや盗難への補償も含まれているものを選び、旅先での不安を少しでも軽くしました。

「備えあれば憂いなし」。これは単なる保険の話ではなく、旅そのものへの心の余裕にもつながります。災難が起きなければ何よりですが、万が一の時に頼れる味方をもっておけば、安心して旅に集中できるのではないでしょうか。

いざ旅立ちへ ─ すべての準備を終えて

『地球の歩き方』を求めて書店を巡り、中国語のフレーズを繰り返し口に出し、映画『敦煌』と『関口知宏の鉄道紀行』を観返すことで、心はすっかり旅モードに。

さらに、褚遂良の雁塔聖教序を臨書して心を整え、西域の乾いた風に備えて服装や食事も細かく整えてきました。

かつて中学生の私は、「いつかタクラマカン砂漠で果てたい」と言っていたほど、西域への憧れを募らせていました。その思いが、歳月を重ねた今、現実の旅として形になろうとしています。

地図の上では知っていた場所、映像や文字でしか出会ったことのない風景と文化に、これから実際に足を踏み入れるのです。万全とは言えないまでも、できる準備はすべて整いました。あとは、この目で見て、耳で聞き、肌で感じるだけ。

この旅でどんな出会いが待っているのか──それは、帰ってきてからの「復習編」にて、ゆっくりと綴っていくつもりです。

では再見。

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