
行きて見しもの
-中国西域旅行で得たリアルなヒント
人生の大きな仕事をひとつ終え、ついに長年の夢だった敦煌を含めた中国シルクロードへの旅に行ってきました。一生に一度は訪れたいと願い続けてきた場所です。
この旅の記録を「予習編」と「復習編」の2本立てで綴りました。「予習編」もあわせてご覧ください。
この「復習編」では7日間にわたる旅の記録を時系列でご紹介します。また、今回の旅で役に立った中国語やアイテムについてもご紹介したいと思います。
旅の教訓
旅の反省点:トランクはけちるな
10年前に使って以来しまい込んでいたトランクを、今回の旅で再び引っ張り出して使ってみました。ところが動かしてみると、ロックがかかったかのようにスムーズに転がらず…。どうやらタイヤが劣化していたようで、ついには敦煌のホテルのじゅうたんにからめとられ、タイヤが三分の一ほど分解してしまいました。
さらにこの古いトランク、作りが昔ながらで本体自体が重い。加えて私は水や食料を人一倍持参したため、荷物の総重量は20kg近くに。ツアー中、バスの運転手さんやガイドさん、添乗員さんに重いトランクを運んでいただく場面も多く、そのたびに申し訳ない気持ちに…。
今回の反省を込めて、次回は軽くて丈夫、タイヤのスムーズな「現代のトランク」で旅に出ようと固く誓いました。
役に立ったアイテム
目薬
敦煌では砂丘から舞う砂に注意が必要。実はこの砂、ラクダのフンなども混ざっていて衛生的とは言えず、住民には目の病や結石になる人も多いとか。ガイドのCさんからも「数日間は目薬で目を洗うように」とアドバイスされました。乾燥と強い日差しで目がつらくなる場面も多く、目薬は必携です。
サングラス
これは「必須」と言い切れます。河西回廊の強烈な日差しから目を守るのはもちろん、意外にも空港内でも大活躍。中国の空港では案内板や看板のLED照明がとにかく明るく、まぶしさに驚かされます。私は空港の中でもサングラスをかけていました。
帽子のあごひも
強風で帽子が飛ばされる心配がある地域なので、帽子にあごひもを付けて正解でした。風が吹いても安心して着用でき、行動中のストレスが減ります。
手袋
氷溝丹霞(ひょうこうたんか)の階段の手すりは、擬木のようにデコボコしていて素手では痛いほど。手すりに頼らずに昇り降りするのはかなり厳しく、実際、素手で手すりを持てなかった方は膝に負担がかかっていた様子。手袋があると安心です。
スポーツドリンク
ホテルやツアーガイドさんがミネラルウォーターを提供してくれますが、ポカリスエットのようなスポーツドリンクを持参して大正解。日差しと乾燥、長時間の見学や移動で想像以上に体力を消耗します。水分補給だけでなく、塩分やミネラルを補えるので疲れ方が全く違いました。
スケッチブック
100円ショップで買った小型のスケッチブックを、常にボディバッグに入れて持ち歩いていました。筆談が必要なときに文字を書いたり、説明のために簡単な絵を描いたりと、大活躍でした。言葉が通じにくい場面でも、このスケッチブックのおかげでコミュニケーションの幅が広がりました。
役に立った中国語フレーズ
ほんの一言でも現地の言葉を使うと、そこに住まう方々との距離が縮まるのを感じました。
挨拶
ありがとう! | 谢谢! | Xièxie! |
こんにちは | 你好! | Nǐ hǎo! |
おはよう | 早上好! | Zǎoshang hǎo! |
ごめんなさい。 | 对不起。 | Duìbuqǐ. |
挨拶のフレーズは、もちろん頻繁に口にしました。とくに「你好!」はとても便利な言葉で、日本語の「どーも」に似た感覚で使えます。たとえば、飛行機で奥の席に座りたいときや、お店で軽く声をかけたいときなどにぴったりです。
また、バスの運転手さんなどに、その日いちばんのタイミングで「早上好!」と声をかけると、にこやかに返してくださることが多く、気持ちのいい一日の始まりになりました。
お店の売り子さんや街角での勧誘に
見ているだけです。 | 我随便看看。 | Wõ suíbiàn kànkan. |
お店で商品をしっかりと見たいときに使いました。店員さんにプレッシャーを与えず、自由に見たいときに便利なひと言です。
いりません。ありがとう。 | 不要。谢谢。 | Bùyào. Xièxiè. |
丁寧に断るときにとても便利です。西安では唐時代風、敦煌ではお腹を出したアラビア風の衣装を着てプロのカメラマンにスチール写真を撮ってもらうのが流行していて、観光地では頻繁に声をかけられました。そんなとき、このフレーズを使えば、角を立てずにお断りすることができました。
場所を尋ねる
どう行きますか。 | 怎么走? | Zěnme zǒu? |
夜市で迷ったとき、ホテルの場所を尋ねるときに使いました。
すみません、お手洗いはどこですか。 | 请问,洗手间在哪儿? | Qǐngwèn,xǐshǒujiān zài nǎr? |
これはホテルのロビーで使いました。英語で話せるスタッフの方でしたが、中国語で話したいと伝えると、にこやかに応じてくれました。
立場を伝える
私は日本人です。 | 我是日本人。 | Wǒ shì rìběn rén. |
中国の方は見た目が似ているせいでしょうか、よく話しかけてくれます。全然わからなくて申し訳ない気分のとき、このフレーズで察してもらいました。ほんの一言でも、自分の立場や事情を伝えられるだけで、ぐっと気持ちが通じやすくなります。
役に立ったスマホアプリ
百度翻訳(Baidu Translate)
一人で行動するときに、現地の人と話したいけれど、中国語がすぐに出てこない――そんなときに頼りになったのがこのアプリ。日本語で打ち込めば中国語に変換してくれ、画面を見せるだけで意図が伝わる。言葉の壁を一気に越えて、心の距離も縮まった気がしました。

アプリ版はGoogle アプリの制約があってインストールしづらいですが、Webブラウザー版で十分機能します。
百度地図(Baidu Maps)
知らない土地で道に迷うのは旅の醍醐味、と言ってられないほど不安なものです。そんなとき、現在地や目的地をすぐに確認できたのがこのアプリ。地元のお巡りさんに道を尋ねた際にも、一緒に地図を見ながら確認できて、とても助かりました。事前にインストールしておくことをおすすめします。
中国のお金事情
最近の中国では、ほとんどの地元の方が「QRコード決済(アリペイやWeChatペイ)」を使っています。そのため、お店の人が現金を持っていないことが多く、お釣りがもらえないという事態が頻発します。
観光客にとっての困りごと
- 現金でしか払えないが、お釣りがない
例:10元の商品に20元札を出しても、お釣りがないので断られる/値引きしてもらえるかは運次第。 - クレジットカードや日本のアリペイは非対応
敦煌博物館のような立派な施設でも、日本の銀行に紐づいたクレジットカードやアプリ型決済は使えません。
対策としておすすめ
- 10元札を多めに用意しておく
支払いがスムーズにいきます。できるだけ細かく崩して持ち歩くのがコツ。 - 1元札もあればなお安心
夜市やローカルなお土産屋さんでは、さらに細かい金額を要求されることも。
まとめ
中国のキャッシュレス化は日本よりもずっと進んでいて、現金しか使えない外国人旅行者にとっては不便を感じる場面も多くあります。
「現金で払えるけどお釣りがない」ことがよくあるため、細かい紙幣をしっかり準備しておくことが、快適な旅の鍵になります。
グルテンフリーでも中国旅行は楽しめる?
「小麦がダメなら中国旅行は無理かも…」と不安になるかもしれません。確かに、名物の刀削麺や饅頭(マントウ)、焼き餅など、小麦を使った料理は数多く、食べられないのは残念です。
でも、完全なグルテンフリーは難しいとしても、工夫すれば小麦がNGでも中国旅行は十分楽しめます。
グルテンフリー旅行で気をつけたいこと
- 機内食・弁当には要注意
パンだけが提供されることも多いため、食べられる主食を持参しておくと安心です。 - ホテルの朝食ビュッフェ
主食はたいていパンか、重湯のような薄いお粥。これだけではエネルギー不足になることも。
ただ、蒸し野菜(ジャガイモ、カボチャ、ニンジンなど)がとても美味しく、主食代わりに活躍しました。
持参して役立った食べもの
- ソイジョイ(約5本)
主食が思うように食べられないときや、小腹がすいたときに。特に最終日は、朝食のお弁当も昼食の機内食もどちらもパンだったため、持ち歩きに便利なソイジョイが頼りに。 - レトルトのおかゆ(3食分)
食事の時間が遅くなる日や、食べられるものがなかったときに。胃にもやさしく重宝しました。ホテルでは湯銭で温めていただきました。 - インスタント味噌汁・具だくさんスープ類(3食分)
疲れていて食欲がないときや、食事がわりに。お湯さえあればすぐ飲めて、ほっとできます。
逆に、日本のビジネスホテルでは必ずある電子レンジが、中国のホテルにはありませんでした。ですので、レトルトカレーやパックご飯は手付かずのまま持ち帰りました。
まとめ
小麦が食べられないと、確かに選べる食の幅は狭くなります。しかし、あらかじめ対策をしておけば、中国でも安心して旅行を楽しむことができます。ごはんものや果物、蒸し野菜をうまく取り入れて、工夫次第で満足のいく旅が可能です。
今回の旅を終えて
関口さんの本を読んで、心を開いて旅に出る準備ができていたおかげで、本当に楽しく充実した時間を過ごすことができました。現地の方が大きな声で話していても、それを「パワフルでいいな」と受けとめられるようになったのは、自分の心の持ち方が変わったからだと思います。
できる限り笑顔で挨拶し、言葉が通じなくても少しでも現地の方とのコミュニケーションを大切にしようと心がけました。その積み重ねが、思いがけない交流や温かな時間に繋がったように感じています。旅先での出来事は、同じ状況でも心のありようひとつで、ずいぶんと印象が変わるものだということを実感しました。
そして、快適で楽しい旅を支えてくださった添乗員さんやガイドさんに心から感謝します。また、知的好奇心にあふれ、多くの刺激と気づきを与えてくださったツアーの皆さまとの出会いも、この旅をより深く、印象的なものにしてくれました。ありがとうございました。
