#008 よそに見てかへらむ人に藤の花 はひまつはれよ枝は折るとも
作品サイズ: | 半紙大 約33×24 cm |
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仕立て: | 額装 |
どんなうた?
詩歌: | よそにみて かへらむひとに ふぢのはな はひまつはれよ えだはおるとも |
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よそに見て 帰らむ人に 藤の花 這ひまつはれよ 枝は折るとも | |
作者: | 僧正遍昭 |
出典: | 古今和歌集 |
制作: | 9世紀 |
「志賀より歸りける女どもの花山に入りて藤の花の下に立ちよりて歸りけるに詠みて送りける」の詞書の後に続く歌です。
僧正遍照といえば、百人一首にある「天つ風 雲の通ひ路 吹きとぢよ をとめの姿 しばしとどめむ」で有名です。いずれの歌からも、なまぐさのレッテルは免れません。
この歌を目にしたとき、陰湿というか、なんだか気持ち悪さを感じました。
僧正遍照は桓武天皇の孫という高貴な生まれで、禁中警護などをしていたそうです。藤といえば藤原氏、何か確執があったのでは、というのは勘ぐりすぎでしょうか。
もうひとつ、藤といえば上村松園画の「焔」を思い出します。
東博で初めて見たとき、何とも言えない絵の雰囲気にのまれて、しばらくたたずんでしまいました。恨めしさと悲しさをたたえた顔をこちらに向けた女性の着物に、2色の藤の花が描かれています。からみつく執念を象徴しているのでしょうか。でも、着物の色も藤の花も、明るくて実に清らかなのです。
藤にとっては人間の感じ方などお構いなしですし、咲きそろった花は見事で香りも良いです。先日、見ごろになった藤を撮影しました。