#087 人のおやの心はやみにあらねとも子を思ふ道のまとひぬるかな
作品サイズ: | 約28×6 cm |
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仕立て: | 軸装 |
どんなうた?
しいか: | ひとのおやの こころはやみにあらねども こをおもふみちの まどひぬるかな |
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詩歌: | 人のおやの心はやみにあらねとも子を思ふ道の(に)まとひぬるかな |
詠者: | 藤原兼輔 |
歌集: | 後撰和歌集 |
制作: | 933年以前 |
出典: | 和泉古典叢書 3 和泉書院 |
“太政大臣の、左大将にてすまひのかへりあるじし侍りける日、中将にてまかりて、ことをはりてこれかれまかりあかれけるに、やむことなき人二三人ばかりとどめて、まらうとあるじさけあまたたびののち、ゑひにのりてこどものうへなと申しけるついでに”
の詞書に続く歌です。
中将(兼輔)が相撲の還饗(かえりあるじ)という行事にて、酔いに任せて、偉い人たちに自分の子供のことを申し上げたついでに、といったような詞書の後に、
人の親の心は闇ではないけれども、子を思う心はまるで闇にいるかのように迷ってしまうものだなあ、といったような歌を詠んだということです。
季節でも恋の歌でもないこの歌に出会ったとき、すごく新鮮でした。1000年以上前の平安貴族も、現代の私たちも、子供を思い悩む気持ちは変わらないのだと。そして、このような歌が勅撰和歌集にあることが、です。