躬恒の歌 – 夏と秋と

作品

#143 夏と秋と行きかふ空のかよひぢはかたへずずしき風や吹くらむ

作品:夏と秋と

作品サイズ: 半紙 約33×24 cm
仕立て 額装

どんなうた?

しいか: なつとあきと ゆきかふそらの かよひぢは かたへすずしき かぜやふくらむ
詩歌: 夏と秋と行きかふ空のかよひぢはかたへずずしき風や吹くらむ
詠者: 凡河内躬恒(おおしこうちの みつね)
歌集: 古今和歌集
制作: 913年以前 (同集成立以前)
出典: 新編 日本古典文学全集11 小学館

“六月(みなつき)のつもりの日よめる” の詞書に続く歌です。
出典には次の訳と解説が。

今日は夏が去り、秋が来る日であるが、その両人がす違う空の道では、片側にだけ涼しい風が吹いていることだろうよ。

六月末では地上はまだ残暑が厳しいが、空にはもう涼しさが来ているだろうと空想した歌。

季節を擬人化して、空から来たり帰ったりするとみなしています。実に詩的です。このような季節を人に見立てる表現は、古今和歌集のほかの歌にもみられるそうです。

よしなしごと

旧暦の6月は、2023年だと7月18日~8月15日に相当するそうです。そして二十四節気の立秋は8月8日、この日に詠まれた歌です。

暦の上ではもう秋、酷暑は続いていますが、夜の虫の鳴き声に秋を感じる今日この頃です。

東京大学 大気海洋研究所が西日本の平均気温の推移を調べました。その研究結果によると現代の26.2℃に比べて、平安初期(820年)は25.9℃、平安末期(12世紀)は24.0℃と、平安時代の平均気温は低かったとのことです。

ちなみに同研究からは、平安末期や戦国時代の争乱期は平均気温が低めであるという興味深い傾向がみられています。もっと低くなると、天明・天保のような大飢饉に見舞われます。人間の行動は地球に操られているようです。

昔と今で気温は多少違うにせよ、人々が暑さを感じて涼しさを待ちわびる気持ちは同じです。

行き交う季節を2段に見立ててみました。

タイトルとURLをコピーしました