#150 臨 関戸本古今集
作品サイズ: | 約21×16~19 cm |
---|---|
古筆: | 関戸本古今集 伝 藤原行成 筆 11世紀後半 制作 |
どんな古筆?
今回はオリジナル作品ではなく、古筆の臨書です。
お手本にしたのは関戸本古今集(以下、関戸本)です。
関戸本は平安朝かな書道の中で、高野切に続いて習うとよいとされる古筆です。各文字が端正な高野切に対して、関戸本は緩急抑揚に富んだ筆づかいや効果的な墨継ぎなどによる、変化にあふれた紙面の美しさが魅力です。
なぜこの部分?
臨書した部分は、「このうたは或人の云 柿本の人丸が也」から始まる連続した3葉です。
なぜこの個所を選んだのか。
それはこの3葉が連続しているにもかかわらず、変化に富んでいるからです。
1葉目の繊細な書き出しから始まり、2葉目には次第に関戸本らしい大きな筆の動きが加わります。3葉目には息の長い連綿線と、ばねのように圧縮した強い線が対照的なリズムを生んでいます。
この多様さを再現したいと思ったからです。
決して、1葉目が西本願寺本第4筆に似ていて好みだったから、という理由だけではありません。。
今回のチャレンジ
1葉目はカラーの複製本*1 に掲載されていますが、2,3葉目は掲載されていません。
そのため、2,3葉目はコロタイプ印刷の複製本*2 に頼るしかありません。ですが、コロタイプ本は墨継ぎの位置がわかりにくく、かつ、墨がかすれた渇筆の部分が見づらいため、臨書するには難度が上がります。特に、3葉目は2行ほどかすれてしまってほとんど映っていません。
この見えない個所を倣書的に補ってみようというのが今回のチャレンジです。
集字したり書風を取り入れたりして、その古典らしく真似て書くこと。
*1: 原色かな手本 19 二玄社
*2: 平安朝かな名蹟選集 第二巻 書藝文化新社
使った料紙
関戸本の料紙は、以下の解説にあるような染め紙です。
数色のつけ染めまたは繊維染の鳥の子質の料紙で、紫の濃色を見開き2枚、単色を2枚、というように、1色の濃淡書く2枚ずつを二つ折りにし、その一折れずつを積み重ねて糸で綴った・・・
解説 関戸本古今集 飯島春敬著 書藝文化新社 より
関戸本の臨書用清書用紙が売られていますが、今回は砂子がほんの少しまかれている新鳥の子の染め紙を使いました。展覧会向けに少し華やかにしたかったからです。
先の解説のとおりに、見開き2枚に相当する1,2葉目は同じ色(明るい茶)に、次の見開きにあたる3葉目を別の色(こげ茶)にしました。
まとめ
今回は関戸本の3葉をかな臨書しました。
関戸本の墨量や景色などのち密に計算されたところと、筆の赴くままに書かれた奔放な線との絶妙な匙加減を自分のものにできたらと思います。