躬恒の歌 – 夏と秋と

作品

#152 夏と秋と行きかふ空のかよひ路は片方すずしき風やふくらむ

作品:夏と秋と

作品サイズ: 約36×9 cm
仕立て 額装

どんなうた?

しいか: なつとあきと ゆきかふそらの かよひぢは かたへすずしき かぜやふくらむ
詩歌: 夏と秋と行きかふ空のかよひ路は片方すずしき風やふくらむ
詠者: 凡河内躬恒(おおしこうちの みつね)
歌集: 古今和歌集
制作: 913年以前 (同集成立以前)
出典: 新 日本古典文学大系5 岩波書店

「水無月(みなづき)の晦日(つごもり)の日、よめる」の詞書に続く歌です。

出典によると ”去りゆく夏 とやってくる 秋とが行き違う空の通り道は、 片側だけに涼しい 秋風が吹いているであろう” とのこと。

よしなしごと

6月の最後の日、つまり今の8月7日頃に読んだ歌です。

この日は古来、上半期分の穢(けがれ)を落とす行事「夏越の祓え」を行う日でした。暑い盛りにお清めをして食中毒を防ぐ効果もあったのでしょう。また、精神的に半期を締めくくるという意味でもあったかもしれません。

ところで、秋は涼風とともに来るという発想、宋の孝武帝や唐の李白の詩を引用しているとのこと。移りゆく季節を知的に表現しています。

さて、例年になく長い残暑がようやく終わり、秋を飛び越えて冬らしくなってきました。

作品を温めているうちに季節が進んで立冬までもが過ぎてしまいました。この時季に読むと行きかふの「ゆき」が一瞬、雪かと勘違いしそうです。

この歌を書くのは2度目です。

紙の縦横比が違うので、構図も全然違います。前回は行き交う季節を上下2段に見立ててみました。今回は縦方向の真ん中の余白で「かよひ路」を表してみました。

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