忠岑の歌 – 山里は

作品

#159 山里は秋こそことにわびしけれしかのなく音に目をさましつゝ

作品:山里は

作品サイズ: 約36×9 cm
仕立て 額装

どんなうた?

しいか: やまざとは あきこそことに わびしけれ しかのなくねに めをさましつつ
詩歌: 山里は秋こそことにわびしけれしかのなく音に目をさましつゝ(作品中は秋こそとくに)
詠者: 壬生忠岑(みぶの ただみね)
歌集: 古今和歌集
制作: 寛平5年9月(893年・是貞親王家歌合)
出典: 新 日本古典文学大系5 岩波書店()

「是貞親王家歌合の歌」の詞書に続く歌です。

出典によると ”山深くになる人里は、秋こそが特にわびしいものだなあ。鹿の鳴く声で繰り返し目を覚ましながら・・・” とのこと。「わびしけれ」というのはどうしようもないさびしさだそうです。

よしなしごと

平安時代の和歌を書いていると、たまに「山里」という言葉が出てきます。「わびしい」という形容詞と共に現れる「山里」とは、いったいどいううところなのかが気になって調べてみました。

古今集に出てくる「山里」というのは、わびしくつらいところ、孤絶したさびしさをいう代表的景物というのだそうです。

そもそも「山里」という言葉は万葉集にはなく、古今集で初めて出てきます。そして、時代を経るにつれてその持つニュアンスが変遷していくのだそうです。

  • 古今集 ・・・ 暗鬱や悲哀
  • 後撰集 ・・・ 地名が具体的に明示され洗練化
  • 拾遺集 ・・・ 自然の美的情趣が加わる

源氏物語でも山里の自然を介して、登場人物の悲哀を効果的に表現しています。

都の中心から離れ、人が少なく自然豊かな山里は、文学表現に欠かせない舞台だということでした。

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