#172 東風吹かば匂ひおこせよ梅の花あるじなしとて春な忘れそ
作品サイズ: | 半紙サイズ 約33×24 cm |
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仕立て: | 額装 |
どんなうた?
しいか: | こちふかば にほひおこせよ うめのはな あるじなしとて はるなわすれそ |
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詩歌: | 東風吹かば匂ひおこせよ梅の花あるじなしとて春な忘れそ |
詠者: | 菅原道真 |
歌集: | 大鏡 |
制作: | 延喜元年(901) (道真公左遷の年) |
出典: | 新編 日本古典文学全集34 小学館 |
“かたがたにいとかなしく思し召めして、御前の梅の花を御覧じて” に続く和歌です。
春になって東風が吹いたなら私がいる太宰府までその懐かしい匂いを届けておくれ、梅の花よ。主人がいないからといって春を忘れるのではないぞ、といったところでしょうか。
第5句の「春な忘れそ」は、出典では「春を忘るな」となっています。
よしなしごと
今年の大河ドラマ『光る君へ』の舞台となった平安中期は《国風文化》の全盛期です。ドラマ中に見られるきらびやかな衣装、豪華な庭園を携えた美しい建物、かな文学(女流文学)はまさに国風文化そのものです。
さて、この国風文化のきっかけを作ったのが、今回の和歌で有名な菅原道真公です。
道真公は「衰退した唐に遣唐使をおくっても学ぶことがない」と言って遣唐使の中止を訴えました。これにより唐文化の影響が弱まり、代わりに日本独自の文化の発展につながったわけです。
政治家としての功績だけでなく文化の興隆をももたらした道真公ですが、優秀すぎるが故に政治のライバルたちに蹴落とされ、九州に左遷させられてしまいました。
都を離れる時に、自宅の大切にしていた梅の木に向かって詠んだのが今回の和歌です。