世阿弥の言葉 – 秘すれば花

作品

#175 秘すれば花なり、秘せずば花なるべからず、となり

作品:秘すれば花

作品サイズ: 約13×18 cm
仕立て 額装

どんな言葉?

しいか: ひすればはななり ひせずばはななるべからざる となり
詩歌: 秘すれば花なり、秘せずば花なるべからず、となり
詠者: 世阿弥
収録: 風姿花伝
制作: 15世紀初め
出典:

秘密だから花なのであって、秘密でないのならば花ではない、となる、といったところでしょうか。

よしなしごと

この言葉は世阿弥が能の極意をまとめた秘伝の書『風姿花伝』に記されています。

最初この言葉を読んだとき、「なんでもあからさまにしてしまうより、秘密にする部分があるほうが美しい」という意味かと思いました。日本人特有の奥ゆかしさは美徳でありそれがないと品がないのだと。

しかし世阿弥公が言いたかったことは別でした。「秘密にしていること自体に価値がある」、これが真相です。

隠しているものは種明かしをすれば何てことないものであるが、隠していること自体をも他の人に知られないことで、最も秘しているものの効果を発揮する。

たとえるなら、マジシャンがすごいことをすると予告をしないでとんでもないマジックを披露したときに、観客は驚きを強くしてより感動する、ということだそうです。

それは《幽玄》という美の価値感に象徴されます。幽玄とは趣が奥深くて高尚で優美なさまです。

この美意識は日本の書道にも通じています。書道では墨をのせる《線》と同じくらい、墨が付かない空間である《余白》を大切にします。文字や絵が余白に浮かび上がり、その空白の部分が作品の深みを際立たせます。

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