季能の歌 – 小夜千鳥

作品

#176 小夜千鳥声こそ近くなるみ潟かたぶく月に潮や満つらむ

作品:さよちどり

作品サイズ: 半紙サイズ 約33×24 cm
仕立て 額装

どんな歌?

しいか: さよちどり こゑこそちかく なるみがた かたぶくつきに しほやみつらむ
詩歌: 小夜千鳥声こそ近くなるみ潟かたぶく月に潮や満つらむ
詠者: 藤原季能(すえよし)
歌集: 新古今和歌集
制作: 建仁2年(1202)(千五百番歌合が行われた年)
出典: 新 日本古典文学大系11 岩波書店

“千五百番歌合に” の詞書に続く歌です。

夜に鳴く千鳥の声が近くなってきた。鳴海潟に月が傾いていくとともに潮が満ちてきたのだろう、といったところでしょうか。鳴海潟(なるみがた)とは愛知県名古屋市にあった海浜の古称だそうですが、この歌の場合「近くなる」と「鳴く」をかけるための地名引用でしょう。

よしなしごと

『千五百番歌合』は建仁2年(1202)秋から翌年春にかけて成立した歌合史上最大規模の歌合です。後鳥羽上皇は新古今時代の代表的歌人30人に対して100首ずつ献上するように命じました。こうして集められた3000首の歌を、歌合せ形式に左右一組につがえて1500番としました。

鎌倉時代初期の文化人の層の厚さと、後鳥羽上皇の情熱の熱さが感じられる歌集です。この20年後に承久の乱を起こしたほどの後鳥羽上皇ですから、武士の世の中になった時代への抗いなのでしょう。

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