躬恒の歌 – 道知らば

作品

#211 道しらば尋ねも行かむもみぢ葉を幣とたむけて秋はいにけり

作品:道しらば
作品サイズ:半懐紙サイズ 約25×37 cm
仕立て軸装

どんな歌?

しいか:みちしらば たづねもゆかむ もみぢばを ぬさとたむけて あきはいにけり
詩歌:道しらば尋ねも行かむもみぢ葉を幣とたむけて秋はいにけり
詠者:凡河内躬恒
歌集: 古今和歌集
制作:913年以前 (同集成立以前)
出典:新 日本古典文学大系5 岩波書店

“同じつごもりの日よめる” の詞書に続く歌です。

道を知っているならば訪ねもするだろうに、美しいもみじの葉を幣として手向けて秋は去ってしまったよ

といったところでしょうか。「同じつごもりの日」とは旧暦9月末日(晩秋)のこと。どこかへ去ってしまう秋に対して、惜別の念を込めて、紅葉の葉を捧げるという情景が描かれているのでしょう。

幣(ぬさ)

「ぬさ」は“旅の安全を祈る手向けもの”と出典に。

また、「①神に祈る時にささげる供え物。」「②旅立ちの時のおくりもの。餞別。はなむけ。」
引用:『日本国語大辞典 第15巻』1976年/小学館

よしなしごと

本作品は『西本願寺三十六人家集 伊勢集』の独特な散らし書きのレイアウトをオマージュし、美しい紅葉に彩られた山並みを連想させるちらし(文字の配置)にしました。

西本願寺三十六人家集 伊勢集

1112年に当時の白河法皇への贈り物として作られたと言われる優美な古筆。リンクはそのコレクションの一部。

紅葉の葉が風に揺られて山々を彩り、その美しさを捧げるかのようにして秋を見送る様子をイメージしています。

また、作品全体に秋がゆっくりとフェードアウトしていく感覚を取り入れ、詩情あふれる余韻を表現するよう心がけました。

この作品の制作にあたり、紅葉が深まる山の景色を思い浮かべながら筆を運びました。風が葉を揺らし、まるで秋が名残を惜しみながら去ってゆくような切なさと共に、作品に落ち着きのある秋の趣を込めています。紅葉の散りゆく様子を通して、自然の美しさと季節の移ろいを表現できたならと思っています。

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