伊勢の歌 – 春霞

作品

#227 春霞たつを見捨ててゆく鴈は花なき里に住みやならへる

作品サイズ:半切サイズ 約136×35 cm
仕立て額装

どんな歌?

しいか:はるがすみ たつをみすてて ゆくかりは はななきさとに すみやならへる
詩歌:春霞たつを見捨ててゆく鴈は花なき里に住みやならへる
詠者:伊勢
歌集: 古今和歌集
制作:8~9世紀
出典:校註國歌大系3

“歸る鴈をよめる” の詞書に続く歌です。

春霞が立つのを見捨てて北へと帰る鴈たちは、花がない里に住み慣れているのだろうか、せっかく春が来て花が咲くというのに。

といったところでしょうか。春霞の立つ中をあとにして、北へ帰っていく雁の姿。どこか寂しさを帯びながらも、淡々と季節が過ぎていく余韻を感じさせる一首です。

よしなしごと

この歌を書くのは3回目です。

今回は、半切という大判サイズの紙に、縦2行で構成してみました。高さ136cm、幅35cmの空間に、文字と余白の呼吸を大切に置いていく作業は、これまでとはまた違う感覚でした。

不思議なもので、同じ歌を書いているのに、構図や紙の大きさ、筆の流れが変わると、まるで違う性格の作品になります。

この歌とは、これからも折にふれて向き合っていくことになるでしょう。そのたびに、少しずつ違う表情を見せてくれる気がしています。

タイトルとURLをコピーしました