#240 夜もすがら物思ふころは明けやらで閨のひまさへつれなかりけり

| 作品サイズ: | 半紙サイズ 約33×24 cm |
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| 仕立て: | 額装 |
どんな歌?
| しいか: | よもすがら ものおもふころは あけやらで ねやのひまさへ つれなかりけり |
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| 詩歌: | 夜もすがら物思ふころは明けやらで閨のひまさへつれなかりけり |
| 詠者: | 俊恵法師 |
| 歌集: | 千載和歌集 |
| 制作: | 1187年以前 (同集成立以前) |
| 出典: |
“恋歌とてよめる” の詞書に続く歌です。
愛しいひとを思って夜通しもの思いにふけっているこの頃はなかなか夜が明けないので、寝室の隙間ですらつれなく感じてしまうよ
といったところでしょうか。この百人一首で有名な和歌は、法師が女の人になりきって詠んだものです。
恋歌とてよめる ― 千載集「恋二」の不思議な並び
『千載和歌集(千載集)』は、平安末期に藤原俊成によって編まれた勅撰和歌集1で、題詠や詞書の扱いに独特の趣向が見られることでも知られます。
この「恋二」には、いずれも“恋歌とてよめる”という同一の詞書を持つ六首の歌が続けて配されています。このように、同じ詞書のもとに複数の歌を並べることは他の勅撰集でも例が少なく、千載集の構成上の一つの特色といえるでしょう。
興味深いのは、これら六首の詠み手がいずれも男性であり、そのうち四首は法師によるものだという点です。恋愛の現実から最も遠い立場にあるはずの僧侶たちが「恋歌」を詠む。そこに俊成は、現実の恋を超えた“情の深さ”を見出したのかもしれません。
それはまた、世俗の恋を超えて「思う」ことそのものを、歌の本質と捉えた千載集の精神を象徴しているともいえます。
- 天皇や上皇などの命を受けて編纂された公的な和歌集 ↩︎
