#242 旅人の袖ふきかへす秋風に夕日さびしき山のかけはし

| 作品サイズ: | 半紙サイズ 約33×24 cm |
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| 仕立て: | 額装 |
どんな歌?
| しいか: | たびびとの そでふきかへす あきかぜに ゆふひさびしき やまのかけはし |
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| 詩歌: | 旅人の袖ふきかへす秋風に夕日さびしき山のかけはし |
| 詠者: | 藤原定家 |
| 歌集: | 新古今和歌集 953 |
| 制作: | 1216年以前 (同集成立以前) |
| 出典: | 新 日本古典文学大系11 岩波書店 |
“旅の歌とてよめる” の詞書に続く歌です。
渡って行く旅人の袖をひるがえす秋風の中で、夕日が寂しい山の架け橋よ
といったところでしょうか。
よしなしごと
『新古今和歌集』は、後鳥羽院の勅命によって編纂された勅撰和歌集であり、藤原定家はその筆頭選者です。和歌に造詣の深かった後鳥羽院自身も編纂には深く関わったことで知られています。
1201年には後鳥羽院の御所に「和歌所」が設置され、1205年には完成を祝う宴が催されました。その後も改定作業は続き、最終的には1216年に至るまで手が加えられました。
ところが、その完成からわずか5年後の1221年、承久の乱を首謀した咎により後鳥羽上皇は隠岐に流されました。当時島流しは死罪よりもつらい刑とされ、社会的地位や親しい人々など、これまでの生活の一切から引き離される、精神的に大変厳しいものでした。
この和歌に流れる寂寥感は、まるでこの上皇の運命を予見しているかのように感じられます。
作品は、この和歌の胸の奥に寒風が吹き込むような物悲しさを中和するように、温かみのある色合いの料紙にしたため、上品で格調ある額装を思わせる雰囲気に仕上げました。
