定家の歌 – 旅人の

作品

#247 旅人の袖ふきかへす秋風に夕日さびしき山のかけはし

作品サイズ:半切サイズ 約135×35 cm
仕立て額装

どんな歌?

しいか:たびびとの そでふきかへす あきかぜに ゆふひさびしき やまのかけはし
詩歌:旅人の袖ふきかへす秋風に夕日さびしき山のかけはし
詠者:藤原定家
歌集: 新古今和歌集 953
制作:1216年以前 (同集成立以前)
出典:新 日本古典文学大系11 岩波書店

“旅の歌とてよめる” の詞書に続く歌です。

渡って行く旅人の袖をひるがえす秋風の中で、夕日が寂しい山の架け橋よ

といったところでしょうか。

よしなしごと

この和歌は、以前、半紙サイズの作品としてご紹介しました。


同じ和歌を今回は半切縦という、まったく異なるスケールの紙に揮毫しています。

不思議なことに、紙の大きさと形が変わるだけで、和歌の佇まいは大きく変わります。

半紙に書いたとき、この歌は比較的近くにありました。
旅人の身近な感情、袖を払う仕草、吹き返す秋風。それらが手の届く距離で感じられる、凝縮された世界です。

一方、縦長の半切に向かうと、視線は自然と上から下へと流れ、時間と距離が引き伸ばされます。秋風は一瞬の出来事ではなく、山道を抜けて長く吹き渡り、夕日は一地点の光ではなく、山の「かけはし」全体を包み込むものとして立ち上がってきます。

和歌は同じでも、受け止める器が変われば、響きもまた変わる。
半切縦ならではの広がりが、この歌の「さびしさ」をいっそう厳しくしてくれました。

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