貫之の歌 – 白雪の

作品

#170 白雪の降りしくときはみ吉野の山下風に花ぞ散りける

作品:白雪の

作品サイズ: 半紙サイズ 約33×24 cm
仕立て 軸装

どんなうた?

しいか: しらゆきの ふりしくときは みよしのの やましたかぜに はなぞちりける
詩歌: 白雪の降りしくときはみ吉野の山下風に花ぞ散りける
詠者: 紀貫之
歌集: 古今和歌集
制作: 913年以前 (同集成立以前)
出典: 新 日本古典文学大系5 岩波書店

「冬」の詞書が添えられています。

白雪が降りしきるときは、吉野の山すそに吹き下ろす風にまるで花が散っているようだ、といったところでしょうか。

よしなしごと

今年の大河ドラマは『光る君へ』、平安中期に活躍した女性 紫式部が主人公です。

個人的に気になるのは、登場人物たちが 【かな】 を書いているシーンです。主演の吉高由里子さんは左利きながら、鍛錬して見事にかなを書かれています。紙を机に置いて書いたり、膝に置いたり、宙に浮かせながら書いている様子は、筆を自由自在に操っていた平安時代の人たちを彷彿とさせます。

今回の作品でお題にした和歌は、紫式部より100年近く前に活躍した紀貫之によるものです。

紀貫之は男でありながら、女手といわれるかなを使って『土佐日記』を記したことで有名です。その冒頭は

男もすなる日記といふものを、女もしてみむとて、するなり

で始まるように女性を演じています。

これによって「かなといえば紀貫之」というイメージがついたからか、それとも彼がかなの能書家だったからなのかわかりませんが、とにかく、かな古筆の第一級品といわれる『高野切』は “伝 紀貫之 筆” とされています。残念ながら紀貫之の真跡(本人が書いたもの)は残っていませんが。

土佐日記は『紫式部日記』や『更級日記』などの女流文学に大きな影響を与えたといわれています。紫式部はきっと紀貫之の真筆を目にし、文学のエッセンスを学びとったに違いありません。

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