菅原孝標女の歌 – あさみどり

作品

#186 あさみどり花もひとつに霞つゝおぼろに見ゆる春の夜の月

作品サイズ:半懐紙サイズ 約25×37 cm
仕立て額装

どんな歌?

しいか:あさみどり はなもひとつに かすみつつ おぼろにみゆる はるのよのつき
詩歌:あさみどり花もひとつに霞つゝおぼろに見ゆる春の夜の月
詠者:菅原孝標女(すがわらたかすえのむすめ)
歌集: 更級日記、新古今和歌集
制作:1043年10月ごろ(出典による)
出典:新 日本古典文学大系11 岩波書店 56

“祐子内親王藤壺に住み侍けるに、女房・上人など、さるべきかぎり物語して、春秋のあはれ、いづれにか心ひくなど、あらそひ侍けるに、人々おほく秋に心をよせ侍ければ ” の詞書に続く歌です。

萌黄色に花も霞と一つに溶け合って、そのためおぼろに見える春の夜の月よ、との訳が出典に。

春秋の優劣を品評する殿上人たちの雅な遊びにおいて、秋がいいという人が優勢の中、春を推す作者がうたった和歌。この歌で一気に春派が増えたに違いありません。

よしなしごと

菅原孝標女だなんて、変な名前だと思いませんでしたか?

実は平安時代の女性の本名は文献に記述されていないのです。それどころか、隣の奥さんの名前すらわからなかったはずです。

というのは、女性の本名を呼べるのは父母や夫などごく限られた人だけだったからです。本名は「諱」と呼ばれますが、生前には口にすることをはばかった(デジタル大辞泉(小学館))もので、本名を呼ばれるとその人に支配されるとも。

一部の官位を授かった女性については公式文書に名前が刻まれているのですが、そのほかの女性は「〇〇のむすめ」とか「〇〇の母」とのみ記録するしかなかったのです。もちろん、「〇〇」は男性の名前です。

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