#190 山近き入相の鐘の声ごとに恋ふる心の数は知るらむ
作品サイズ: | 半懐紙サイズ 約37×25 cm |
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仕立て: | 額装 |
どんな歌?
しいか: | やまちかき いりあひのかねの こゑごとに こふるこころの かずはしるらむ |
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詩歌: | 山近き入相の鐘の声ごとに恋ふる心の数は知るらむ |
詠者: | 藤原定子(ていし・さだこ) |
歌集: | 枕草子 |
制作: | 1000年前後(平安中期) |
出典: | 新日本古典文学大系 25 岩波書店 |
清水にこもりたりしに、わざと御使ひして給はせたりし、唐の紙の赤みたるに、草にて、
に続く定子の和歌です。清少納言が清水であらにこもっているときに、中宮さまがわざわざ使いをよこして、貴重な唐の紙の赤いものに草仮名にてかかれてあったのはこんな和歌でした、ということです。
歌の意味は、
山に近いお寺(清水寺)の夕暮れどきの鐘の音が鳴るたびに、私のあなたを恋しく思う心の数がわかるでしょう
といったところでしょうか。
よしなしごと
枕草子の筆者である清少納言が、主人である中宮定子からもらった恋文のような和歌を、うれしく、誇らしく思う気持ちが、枕草子には表れています。
私が気になったのは、定子さまは「かな(女手)」ではなく「草仮名」で和歌を書かれた、という点です。てっきり当時の女性は「かな」で文字を書いていたと思っていました。特に親しい人には柔らかな「かな」でお便りするものと思い込んでいたので、清少納言に「草仮名」で書いてこられたというのが意外でした。
本作品は定子さまが書かれたような「草仮名」ではなく、この時代ごろから急速に発展した「かな」で書きました。いずれ「草仮名」での作品も作ってみたいです。