牧水の歌 – かたはらに

作品

#241 かたはらに秋ぐさの花かたるらくほろびしものはなつかしきかな

作品サイズ:半紙サイズ 約33×24 cm
仕立て額装

どんな歌?

しいか:かたはらに あきぐさのはな かたるらく ほろびしものは なつかしきかな
詩歌:かたはらに秋ぐさの花かたるらくほろびしものはなつかしきかな
詠者:若山牧水
歌集: 路上
制作:明治44(1911)年
出典:若山牧水歌集 岩波文庫
小諸城跡で一人たたずんでいるとき傍らの秋草が語ることには「亡くなった人々は懐かしいですね」と。

といったところでしょうか。

よしなしごと

信州・小諸城址は、いま「懐古園」として多くの人に親しまれています。
その石垣の一角に、この牧水の歌が刻まれているのだそうです。
私も以前訪れたことがあるのですが、当時はその存在にまったく気づかず、
後になって知ったとき、なんとも言えない“時の重なり”を感じました。

「かたはらに秋ぐさの花かたるらく――」
朽ちたもの、過ぎ去ったものを懐かしむ牧水のまなざし。
廃墟の静けさの中に、秋草がひそやかに語りかけてくるような情景が浮かびます。
どこか寂しさを帯びながらも、温かみを感じる歌です。

書作品では、秋の夕焼けを思わせるあたたかな色合いの料紙を選びました。
そこに秋草の模様が描かれており、まるで自然に草が生えているような風合いです。
その上に、筆の流れが草の姿と呼応するように――
秋草が風に揺れながら語りかけるようなイメージで書いてみました。

懐古園の石垣の前で、この歌をもう一度思い出してみたいです。

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